ポエム
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一本道
この道は多くの者が通る まるでアリの行列だ。
道を進む者は皆、道の先には幸せが待っていると思ってる。
根拠はない。ただ皆が口々に言うからだ。

この道では、荷物を背負わなければならない。
立ち止まることは許されず、
座って休めば、「道を外れたもの」として扱われる。


ある日、美しい野花が見えてきた。その花に近寄って、手に入れたいと思った。

一緒に歩く者に、あの花を手に入れたいと言った。
すると、「この道は、安全なんだ。道から外れると、危険な目にあうぞ。」
また、ある者には「道から外れたら、全ての者に、外れた者として見られるぞ。」
と言われた。

根拠はないが、信じた。
歩いて行くと、花は見えなくなってしまった。
その時に、後悔と悲しみが、湧き上がってきた。
次にあの花を見たら、絶対に取りにいこうと思った。
しかし、待てども待てども、その花が見えてくることはなかった。

次に見えてきたのは、一本の桃の木だった。
とても、甘そうな桃が、たくさん落ちていた。拾って食べようと思った。
だが、また周りに言われると思い少し躊躇した。
しかし、花の時のように後悔したくないと思った。体はすでに走っていた。
桃の木までは、簡単に着くことができた。

奥を見ると、沢山の桃の並木が、広まっていた。
それからは、桃を沢山食べた。
甘い桃もあれば、腐っている桃もあった。
最初は分からず、よくお腹を壊した。
けれど、食べているうちに腐った桃を判断できるように、なっていった。

しばらくすると、道を歩く者達を見かけた。急いで走っていった。
一緒に歩いていた者に、桃の木の話をしようとした。
だが、誰も取り合わなかった。
唯一話を聞いてくれた者は、道の先には沢山の桃の木があるという噂を流した。
19/07/16 21:46更新 /



談話室



■作者メッセージ
通りすぎた花は、もう二度と見ることも摘むこともできません。

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