どこかにいいネタはないかと歩く
天気は気持ち悪いくらいの快晴　
少し強い風が耳を掠め音が鳴る
道ゆく人など誰もおらず
立ち止まり　煙を吐く音だけがよく響く

日陰には少し溶け残った雪
午後の柔らかな日差しでも溶けなかったみたいだ
遠く聞こえる風情のない工事の騒音に
世界にひとりきりではないと思い知らされる
置き去りの錆びた自転車
なんの意味のない空バケツ
奴らは死んでいるんだな　と思う

犬を二匹連れたいつもの人
マネキンみたいに無表情で
機械的に散歩するあの人と
あんまり楽しくなさそうで
ただただ歩くあの犬が
通り過ぎるのを眺めながら
何が楽しいのかなと思ってしまう

今、この瞬間に
何も植えられてないこの死んだ畑の縁で
ビールを飲んだらきっとすごく
すごく美味しいんだろうな
今月は金欠だから飲めないか
飲んだ気分になって我慢しよう

ネタ探し　鳥山渉

■作者メッセージ
友人に　何かネタをくれと言ったら
ネタ探し　と返されたので
だらだらと。