ポエム
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撮りたがりちゃんと被写体くん
  
 
 親愛なる君へ
思ってたことを伝えられそうにないから
手紙に残しておこうと思う。
君と初めて会ったのは四月の静かな教室だ
ったね。
君はひとりでさ 窓から見える桜を
あのカメラで真剣に撮っていたのを覚えてる。

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私ももちろん覚えてるよ
あんまり綺麗な桜だったから
夢中になって撮っていた
教室の入り口に貴女がいることなんて
声をかけられるまで全然気づかなかったよ

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少しずつ話をするようになってから
いつの間にか君は僕の日常に溶け込んでいた。
いつも元気いっぱいに 僕についてきては
「隙あり」なんって笑って
シャッター切っていたけれど
僕なんか撮って何が楽しいんだ。
いつもそう思っていたよ。

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私ね 素敵な貴方を永遠にしたかったんだ
ちょっと無愛想で でも優しさはあって
素敵なこころの色をしていた貴方を
このフィルムに焼き付けて 
いつか子供や孫ができたら
私の愛した人はこんなに素敵な人なのよって
自慢したかったんだ

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君があんまり僕を撮るもんだから
実は時々 鏡を見ては
笑顔の練習なんかしたりしてたんだ。
君には恥ずかしくて言えなかったけれどね。
僕はこの手紙の中では正直でいようと思う。
君はこの手紙を読んできっと 笑っていることだろう。
そう願う。

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笑顔の練習なんかしなくたって
貴方が時々見せてくれるあの笑顔は 
この素敵が溢れる世界で
何より素敵なものだと私は思う
でも 私のためにそんなことしてくれてたなんて
ちょっと嬉しかったりもするよ

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君が僕を撮った三年間
きっと君のアルバムの中には
いろんな僕がいるだろう。
初めは被写体なんて乗り気じゃなかった。
でも 楽しそうに撮る君を見て
僕もだんだん楽しくなっていたし
いつか僕も 楽しそうな君を撮れたら
そう思っていた。 

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貴方を撮り続けた三年間
私にとっては紛れもない青春だった
貴方がどう思っていたか
こうして知れてよかった
楽しかったのは私だけなんじゃないか
貴方は実は嫌じゃなかったのか
明るさで誤魔化していたんだよ
よかった それだけで救われたよ

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僕はこれから遠いところへ旅に出てしまう。
次にいつ会えるのかはわからない。
もしかしたらもう二度と…
でも どこにいても僕の胸の中には
君との思い出がある。
だから大丈夫。
君もきっと大丈夫だと信じてる。

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君と過ごした時間があるから
私もきっと強く在れる
次に君に会える時が来たら
完成したアルバムと一緒に
君への大好きを伝えようと思うよ
だから待ってる
待ってるからね

撮りたがりちゃんと被写体くん 鳥山渉
21/01/23 16:18更新 / 言欲



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■作者メッセージ
もちろんフィクション。
僕はボーイミーツガールが気持ち悪いくらい好きで
憧れている。
僕の理想像のようなもの。

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