食卓に並ぶ食事が豪華だったわけでも
飛び抜けて綺麗だったわけでもない

だがうつくしいと思ったのだ

食べ溢しているにも関わらず
食器を鳴らしているにも関わらず

食事がうつくしいということは
殺すことに繋がるかも知れない

うつくしい殺し方という
馬鹿馬鹿しい刹那的な考え方は

少女詩人の間に蔓延している
ありふれた病のひとつとして
元少女詩人は分類しているから

自分にも欠片ほどの詩人が
躯に巣食っていたのかも知れない

なんて馬鹿馬鹿しい

残念ながら殺すことが
うつくしいと思う少女は
私の中ではとうの昔に
私の獅子に喰われてしまった

あのうつくしい食卓の主は
｢生きることは醜い
こうして皿に乗る死が
何よりうつくしい｣と話す

｢料理を笑って頬張る
うつくしい食事こそ
生きている証明ではないか｣
私は笑って返した

生と死の両方がなければ
うつくしくないんだよと

生と死が揃ったところで
うつくしい食事をしよう

あなたをうつくしいと思ったのは
もう理由など言わなくても解るだろう

さあ行儀よく手は膝の上に
運ばれて来る料理を待つ
うつくしく食べられるかな