蕨とわらび餅
わらび餅 あの蕨の粉でできている
子どもの頃
蕨の季節に誘われて
里山の日の当たる斜面に
先っぽが赤ちゃんの手のような
蕨が手招していた
父が見分け方を教えてくれたっけ
自分が先に見つけても
わたしに採らせてくれたっけ
大きな葉っぱの日陰にいて
茎をポキっと折る感触
喜んで母に渡した瞳
レジ袋に入れる音
ただの山菜採りが宝探しで
わたしに採られるために
そこで光ってくれていた
わらび餅がその蕨だったという新発見
わらび餅の箱をひっくり返して気がついた
蕨の命を頂いて 五月の恵み
父母の恩愛に 心とろける