花紺青の歪な器が
盆の上に据わらず
揺れに合わせて湯を溢した

とても出来の悪い器だと
鼻で笑う者はいたが
手に取ろうとする者は居なかった

器を不憫に思った男がいた

何故手に取らない
これが毒草の色をしているからか
それとも歪な形をしているからか
そんな事はこの器のせいではない
他の器と同等に扱うべきだ

そう男は叫んだが
彼が器を掴むと湯が零れ
掴む手にかかり
驚いた男は器を投げ落とした


落ちた器は割れてしまった



器は湯飲みの為ではなく
花を飾る為のものであった

無知な茶屋の店主はそれに気付かず
湯を入れて客に出していた

器をつくった者は
縁に葉を休める窪みをつくり
そこに黄色い野花を生けてほしいと
願いを込めて焼いた

花紺青に栄え
とてもとても美しく彩って


美しい器は割れてしまった

無知な不公平の為か
利己的な正義感の為か
それは誰にもわからない