ポエム
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20歳になったんだ
巷ではCOVID-19を恐れ自粛するムード
お店なんてほとんど開いてない
せっかく見つかったいい焼肉屋さん、予約取り消しになっちゃったみたい

数週間前から何度もその話をして
どうしたらいいんだろう、間に合うかなって、
何ができるかなって、ずっと焦っていたよね、あなたは

私にそこまでしてもらう価値はあるのだろうかと
ひとりでいる夜に何度問うたか
自分の中に、答えは見つからなくて
代わりに申し訳なさでいっぱいだった
ごめんなさい、とつぶやき続けた

5月5日の夕方からあなたはうちに泊まることになっていて、
お店の予約ができたという話は聞いていなかった
チャイムが鳴らされ、ドアを開けると

差し出されたのは、ピンクのバラの花束

屈託のない笑顔であなたは私の名前を呼ぶ
花言葉なんて知らなかったけれど調べたという
とても、きれいに、咲いていた

花はいつか枯れてしまう、ずっと大事にしていたいのに
顔を少し曇らせた私
あなたははじめっからそんな事お見通しだったみたいで

花はその一瞬を大事に大事にして
だから今こんなにもきれいなんだ
そのことを心の中で覚えていればいい

屈託のない笑顔に少し照れた生真面目な顔を混ぜ
あなたは真剣なまなざしでそういった
誕生日おめでとう

今まで誕生日というものを俯瞰しすぎていたような気がする
毎年誕生日を題材にした詩を書いて、投稿して
また一年経ったんだ、と時計のように
お祝いの言葉はもらうたび社交辞令で
こっちだってありがとうって何気なく言っていた
誰かに大切にされること
愛する人のいること
それだけでこんなにも意味をもつんだ
誕生日というのは

私はありがとうをいっぱい込めてあなたに抱きついた
あなたはとてもうれしそうで
まるで自分のことのようにうれしそうで

5月5日から5月6日に変わる瞬間
私たちは2人でベットの中にいて
20歳になった瞬間、また、誕生日おめでとうっていわれた

誕生日パーティーは家でしようっていって
いつも料理をしないあなたがてきぱきと準備する
焼肉の代わりに、ローストビーフをつくってくれるんだって

あなたはケーキも自分で焼いて持ってきていて
ちょっと高級な赤ワインと
シンプルなベージュの腕時計を差し出してきた

誕生日おめでとう

こうやってあなたに祝ってもらうために
きっと私は生まれてきたのだろう

ありがとう、大好き

5月6日は私の誕生日
20歳になったんだって気づいたんだ
20/05/13 00:00更新 / なさか



談話室



■作者メッセージ
お久しぶりです。なさかです。2カ月弱ぶりです。
2020年5月6日、20歳になりました。大切な人に祝ってもらえて、誕生日を迎えたのだなと実感しました。生きているってこういうことなのだなと。
これからもぼちぼち投稿したり、みなさんの詩を読んだりしたいです。
現在大学2年生、オンライン授業ですが課題も多く、忙しい日々ですが、やっていけたらいいなと思います。これからもよろしくお願いします。

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