<都会>という名のゲップ
街では束縛されるばかりで
金縛りになったように動けなかった
視線の上げ下げにさえ
内臓を抉るようなゲップが伴った
人混みを蹴散らしながら
ただ明日への手掛かりのみを探った
それも手探りで―心と身体は
空中分解した蝶のようにバラバラだった
常に単独行動で 夜の美術館や
土曜日の映画のオールナイト
古本屋ばかりに入り浸っていた
800円で ラーメン・ライス
ギョウザを食べて
独りのアパートへ帰る
異性との付き合い方も全く知らず
銭湯の濡れた鏡に映る
自分の蒼白い顔が
何とも情けなかった
本を全部売って得た金で
―明日は散髪に行こう―
大発見でもしたように思ったものだ
それでもその街に生かされた
少数の友人と 書物の
尽きることのない列―
*
何年か振りに その街を訪れた
冬だった まだ営(や)っていた
昔の銭湯に浸かりに行って
その湯の匂いに涙したのは―
金縛りになったように動けなかった
視線の上げ下げにさえ
内臓を抉るようなゲップが伴った
人混みを蹴散らしながら
ただ明日への手掛かりのみを探った
それも手探りで―心と身体は
空中分解した蝶のようにバラバラだった
常に単独行動で 夜の美術館や
土曜日の映画のオールナイト
古本屋ばかりに入り浸っていた
800円で ラーメン・ライス
ギョウザを食べて
独りのアパートへ帰る
異性との付き合い方も全く知らず
銭湯の濡れた鏡に映る
自分の蒼白い顔が
何とも情けなかった
本を全部売って得た金で
―明日は散髪に行こう―
大発見でもしたように思ったものだ
それでもその街に生かされた
少数の友人と 書物の
尽きることのない列―
*
何年か振りに その街を訪れた
冬だった まだ営(や)っていた
昔の銭湯に浸かりに行って
その湯の匂いに涙したのは―