ポエム
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<都会>という名のゲップ
街では束縛されるばかりで
金縛りになったように動けなかった
視線の上げ下げにさえ
内臓を抉るようなゲップが伴った

人混みを蹴散らしながら
ただ明日への手掛かりのみを探った
それも手探りで―心と身体は
空中分解した蝶のようにバラバラだった

常に単独行動で 夜の美術館や
土曜日の映画のオールナイト
古本屋ばかりに入り浸っていた

800円で ラーメン・ライス
ギョウザを食べて
独りのアパートへ帰る

異性との付き合い方も全く知らず
銭湯の濡れた鏡に映る
自分の蒼白い顔が
何とも情けなかった

本を全部売って得た金で
―明日は散髪に行こう―
大発見でもしたように思ったものだ

それでもその街に生かされた
少数の友人と 書物の
尽きることのない列―

    *

何年か振りに その街を訪れた
冬だった まだ営(や)っていた
昔の銭湯に浸かりに行って
その湯の匂いに涙したのは―
20/09/26 17:17更新 / 武中義人



談話室



■作者メッセージ
昔は無茶をしました。今生きていられることに、感謝です。

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