ポエム
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真っ赤な満月
視線を逸らさない街―
目線のあたりに
狂気がたむろする
街―平板を拒否した
凹凸の月
街―川の流れを斥けた
人の流れよ

濃紫(こむらさき)の夕暮れ時
イチジクを買って
舌の痺れに目が覚めて
見つめると
道路工事の看板が
昨夜来の台風に傾きかけて
ガードレールに引っ掛かっている

それを元の場所に戻して
そのてっぺんに イチジクの
食べさしを置いて
急に暗くなってきた
帰り道を急いだ

携帯が鳴る
彼女からだ―
あわてて耳に当てると
その拍子に見上げた
ビルディングの向こうに
真っ赤な満月―
20/09/01 13:00更新 / 武中義人



談話室



■作者メッセージ
都会にはじき出されて、辛うじて生き残った私の、唯一出来た事。それは、それらの街を愛することでした。

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