ポエム
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友は唇を傾ける と言うより
こころを傾けて 好きな日本酒を
ひと口だけ啜った 感情に
走り過ぎぬように用心しながら

―その酒は濁り酒だね―と
私は強いて微笑みながら言った
彼はひとつ頷いてみせて そして
ふた口目を啜った 彼には もはや

言葉を発する喉はなかったのだ
酒を愛し 夜がくれば 無言で
何杯もコップを満たした 彼には
日常の海鮮として<酒>という港があったのだ

その<彼>が鬼籍に入って丸1年目
この立春に 私は墓参りをした
敢えて何も持参しなかった 友の
生前の笑顔が 春の青空に高く 高く―
23/02/04 20:39更新 / 武中義人



談話室



■作者メッセージ
私は、専ら、タバコとコーヒーですが。

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