海辺にて―(終わり)
15
海の縁取りで空を見た
一つのもののように見えた
コンペイトウをばら撒いた空の海―
ドルフィンは黄金色に その
胴体を濡らし 雲に向かって
生命のシグナルを送る
16
赤い風船を膨らませて
空に放つ 風に載って
随意の方向に傾く その
傾斜の無秩序よ
空中が或る痒みを覚えて
笑いながら その<赤>を受け取る
17
影を食らうアスファルト
が 影そのものになってしまった
波を食らう海面が
月の生理で上下している
18
珊瑚礁の白い手よ
その呼吸するアブクの 何と
まん丸いこと―餌と間違えて
それを飲み込む魚の口
白い手はそこを撫でる
魚は尾ひれを動かし急旋回する
19
緩慢な肉体の腐敗よ
それは<目>が意識した通りに
己の内臓に直接やってくる
このコーヒーを飲む間だけ
神経は鈍麻し 精神の
切っ先はやぶ睨みに
己の悪を彫琢する
20
ヤブカラシの実が 地丘の
断面から生えている
それを摘むと黒い汁が出た
空は晴れていた それを
見つめる明るい微笑んだ目よ
視線が少し痒くなった
21
詩人は英雄になることを望み
その夢は結局地に堕ちるのが
常だが―自分の凡百に
気づいた者のみが
ヒーローである
海の縁取りで空を見た
一つのもののように見えた
コンペイトウをばら撒いた空の海―
ドルフィンは黄金色に その
胴体を濡らし 雲に向かって
生命のシグナルを送る
16
赤い風船を膨らませて
空に放つ 風に載って
随意の方向に傾く その
傾斜の無秩序よ
空中が或る痒みを覚えて
笑いながら その<赤>を受け取る
17
影を食らうアスファルト
が 影そのものになってしまった
波を食らう海面が
月の生理で上下している
18
珊瑚礁の白い手よ
その呼吸するアブクの 何と
まん丸いこと―餌と間違えて
それを飲み込む魚の口
白い手はそこを撫でる
魚は尾ひれを動かし急旋回する
19
緩慢な肉体の腐敗よ
それは<目>が意識した通りに
己の内臓に直接やってくる
このコーヒーを飲む間だけ
神経は鈍麻し 精神の
切っ先はやぶ睨みに
己の悪を彫琢する
20
ヤブカラシの実が 地丘の
断面から生えている
それを摘むと黒い汁が出た
空は晴れていた それを
見つめる明るい微笑んだ目よ
視線が少し痒くなった
21
詩人は英雄になることを望み
その夢は結局地に堕ちるのが
常だが―自分の凡百に
気づいた者のみが
ヒーローである