海辺にて―(続き)
8
夜明けの波打ち際の
小さな貝殻―それは
海を翻訳する
9
時刻はサルスベリの花の
表面で止まっている その花が
今日 咲いている 庭が
静かに 誇らしげに
どこまでも広がってゆく
10
クモの巣が陽光に煌めいている
その細い銀色の向こうに
よく晴れた空の キーンという
谺が 旅客機のエンジン音で
更に蒼味がかって
疲れを知らぬ犬が駆け回っている
11
表札に外国人の名前があった
少し開いた木戸から覗くと
女性が一人で髪を洗っていた
金髪の空に照る思い―
静かに蝉の啼く声―
海鳥たちが宙で翻る
12
虹が出た 夕立ちが上がって
しっかりとした色だ その脚は
消えかかっている 空中の祝祭
目の透き通る呼吸―それが
明日を呼ぶ 今の今
この色相は<創る力>だ
13
翼が<時>となって
誰も知らない場所へ
飛んでゆくのだな―鳥よ
水平飛行しているマヒワよ
14
丘に大の字に寝転ぶ
飲みかけの缶コーヒーを握って―
雲の白さが目蓋を弾く
若かったころ 太陽を憎んでいた
苦笑いをして その想い出の
ひとつひとつに化粧をする
今は少し遊びたいのだよ―
夜明けの波打ち際の
小さな貝殻―それは
海を翻訳する
9
時刻はサルスベリの花の
表面で止まっている その花が
今日 咲いている 庭が
静かに 誇らしげに
どこまでも広がってゆく
10
クモの巣が陽光に煌めいている
その細い銀色の向こうに
よく晴れた空の キーンという
谺が 旅客機のエンジン音で
更に蒼味がかって
疲れを知らぬ犬が駆け回っている
11
表札に外国人の名前があった
少し開いた木戸から覗くと
女性が一人で髪を洗っていた
金髪の空に照る思い―
静かに蝉の啼く声―
海鳥たちが宙で翻る
12
虹が出た 夕立ちが上がって
しっかりとした色だ その脚は
消えかかっている 空中の祝祭
目の透き通る呼吸―それが
明日を呼ぶ 今の今
この色相は<創る力>だ
13
翼が<時>となって
誰も知らない場所へ
飛んでゆくのだな―鳥よ
水平飛行しているマヒワよ
14
丘に大の字に寝転ぶ
飲みかけの缶コーヒーを握って―
雲の白さが目蓋を弾く
若かったころ 太陽を憎んでいた
苦笑いをして その想い出の
ひとつひとつに化粧をする
今は少し遊びたいのだよ―