薄霧
おまえは来る 夜の零時を過ぎた先
心音がゆるやかに響いて
秒針の音にとけこむ間際
その合間におまえの足音が紛れ込む
視界の端に見えるものたちへ
情をかけないように
カーテンに指をかけて 窓を塞ぐ
おまえは来る 夜の境を崩さないように
薄暗い鏡の中で 灰色の塊が揺らぐ
懐に仕舞われた銃には銀の弾が
まだ 二つばかり残っている
おまえが来た
閉じた夢の中で 名を呼んではいけない
声には懐かしいものが混ざるが
しかし おまえであることは偽れない
チェスの盤上で駒を進めるように
対角線上でぼくとおまえは向かい合う
互いの呼吸音を耳で追いかけて
それでも情がうつらないように
ポケットの中を確かめて
ぼくは夜を越える
騒がしくなる外の声が
互いに合図を交わしだす
冷めた顔がゆっくりと笑みをつくり
呼応するように透明な光が差し込んだ
卵黄をといた朝焼けの空を
静かに見つめたあと
無音のうちに霧が晴れるように
さよならも言わずに
おまえは行く
心音がゆるやかに響いて
秒針の音にとけこむ間際
その合間におまえの足音が紛れ込む
視界の端に見えるものたちへ
情をかけないように
カーテンに指をかけて 窓を塞ぐ
おまえは来る 夜の境を崩さないように
薄暗い鏡の中で 灰色の塊が揺らぐ
懐に仕舞われた銃には銀の弾が
まだ 二つばかり残っている
おまえが来た
閉じた夢の中で 名を呼んではいけない
声には懐かしいものが混ざるが
しかし おまえであることは偽れない
チェスの盤上で駒を進めるように
対角線上でぼくとおまえは向かい合う
互いの呼吸音を耳で追いかけて
それでも情がうつらないように
ポケットの中を確かめて
ぼくは夜を越える
騒がしくなる外の声が
互いに合図を交わしだす
冷めた顔がゆっくりと笑みをつくり
呼応するように透明な光が差し込んだ
卵黄をといた朝焼けの空を
静かに見つめたあと
無音のうちに霧が晴れるように
さよならも言わずに
おまえは行く