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嫌われる勇気
あの幻のたった一年の浪人時代。

彼と私は"浪人"という言葉越しに出会った。

常に私たちには
距離のない分厚い壁があった。

友達を作らないと決めてたくせに
あっという間に
イライラするほど
好きになっていた。

服の趣味が悪くて
顔もタイプじゃない。
だけど少し寝癖のある髪は
何故だかイケて見えた。
捻くれ者でウザいのに
優しくて一緒に電車で帰るのが楽しかった。


彼は塾内で私にだけ下の名前を教えた。
なのに私の名前は英単語の代わりに忘れたと言った。

そんな彼の好きな色は
ターコイズブルー。
好きなことは
サッカー。
1人での帰りの電車は
読書時間。
相談に乗るのが得意。
兄妹は3人で自分が長男。
彼がいうにはキモいくらい仲良くて
悩み事は
妹の小学生女子特有のぶりっこ。
男の子は目立ってなんぼ派。
かわいい顔よりおもしろい子が好き。

いろんな話を聞いた。

なんだって
覚えているのは私の方。

好きだったんだな。
浪人生はそんなの
認められなかった。

話しかけないでくれたらよかったのに。

次もしすれ違うことでもあれば
その頃の彼はもう
私の知らない彼だろう。

本当は大好きでした。
23/05/29 22:01更新 / すず



談話室



■作者メッセージ
彼が読んでいた本は
嫌われる勇気
でした。

正直まだ引きずっているけど、会いでもしたら私は彼のかわりように幻滅するのだろう。

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