ポエム
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思い出の裏側で
幼い頃に僕がぶちまけた
アクリル絵の具を涙で溶かして
あの子はシャボン玉を吹く
赤色 青色 緑色
塗り損なった淡い空に
煌めく玉を沢山飛ばす

昨日の夕暮れに浮かべた風船や
明日の朝靄に滲ませた手紙は
誰のもとに届いたのだろうか

未熟な僕が喉を詰まらせた
裏路地や 高架下の影で
あの子は高らかに笑う
湿った景色の至る所に
こびりついた赤錆とカビを
無邪気な声で洗い流す

ぽつり ぽつりと儚く降った
雨粒達の破片を照らして
陽はどこに昇ったのだろうか

澄んだ靴音を響かせながら
僕の脳みそのしわの縁を
見知らぬあの子は駆け回る
その背中を追いかけながら
僕は仄暗い記憶の淵を
ささくれた指で掻き回す
23/02/10 21:33更新 / わたなべ



談話室



■作者メッセージ
煌めく(きらめく)
朝靄(あさもや)
滲ませた(にじませた)
赤錆(あかさび)
儚く(はかなく)
陽(ひ)
縁(ふち)
仄暗い(ほのぐらい)
淵(ふち)
掻き回す(かきまわす)
です。

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