ポエム
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ぼくの 僕の 手前の人たち
父さんと母さんが笑い合う声を聞いて
笑うことの嬉しさを知ったよ
友だちと日が暮れるまで駆け回って
遊ぶことの楽しさを知ったよ
あの子の赤く染まった頬を見て
憧れることの甘酸っぱさを知ったよ

眠る前 歯を磨いた後に鏡を見ると
ぼくの手前の人たちがいたんだ
見つめていると みんな溶けて重なって
ぼくの顔が浮かび上がってきたから
昔は夜が怖くなかったんだ

父と母がいがみ合う声を聞いて
黙ることの大切さを知った
親友だと思っていた彼に騙されて
信じることの難しさを知った
彼女の頬を伝った涙を見て
求めることの残酷さを知った

眠れずに 酒で薬を流し込んだ後に鏡を見ると
ぼんやりとした顔の僕がいる
見つめていると 僕の手前の人たちが浮かび上がってきて
みんな僕を置いてどこかに行ってしまうから
今は夜が怖くてたまらない
25/12/06 17:05更新 / わたなべ

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