ある出会い
階段もエレベーターもない団地の屋上で、
おさげ髪の少女が歌を口ずさんでいた。
その歌は彼女が胎児だった頃に聴いていた、
水平線から風を呼び寄せる歌だった。
団地の隅の小さな花壇の前では、
少年が険しい目つきで周囲を見回していた。
彼はこれから立ち小便をするところだったが、
誰かに見られはしないかと怯えていた。
やがて二人は互いの存在に気付き、
どちらからともなく見つめ合った。
少女には少年の顔がよく見えたが、
少年は逆光で少女の輪郭しか分からなかった。
ねえ、そこで何をしているの。
さ、さあな。何だっていいだろう。
ねえ教えて、お願い。とても気になるの。
ああ、もう。小便をするところだったんだよ。
なあ、どうやって屋上に登ったんだよ。
さあね。それは秘密。
はあ、じゃあそこで何をしているんだよ。
さあね。それも秘密。
少女は悪戯な笑みを浮かべ、
少年は頬を赤らめながら俯いた。
その瞬間、潮の香りを含んだ生温い風が吹き、
二人の髪と花壇の白い花を揺らした。
おさげ髪の少女が歌を口ずさんでいた。
その歌は彼女が胎児だった頃に聴いていた、
水平線から風を呼び寄せる歌だった。
団地の隅の小さな花壇の前では、
少年が険しい目つきで周囲を見回していた。
彼はこれから立ち小便をするところだったが、
誰かに見られはしないかと怯えていた。
やがて二人は互いの存在に気付き、
どちらからともなく見つめ合った。
少女には少年の顔がよく見えたが、
少年は逆光で少女の輪郭しか分からなかった。
ねえ、そこで何をしているの。
さ、さあな。何だっていいだろう。
ねえ教えて、お願い。とても気になるの。
ああ、もう。小便をするところだったんだよ。
なあ、どうやって屋上に登ったんだよ。
さあね。それは秘密。
はあ、じゃあそこで何をしているんだよ。
さあね。それも秘密。
少女は悪戯な笑みを浮かべ、
少年は頬を赤らめながら俯いた。
その瞬間、潮の香りを含んだ生温い風が吹き、
二人の髪と花壇の白い花を揺らした。
25/11/05 20:51更新 / わたなべ