ポエム
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ある出会い
階段もエレベーターもない団地の屋上で、
おさげ髪の少女が歌を口ずさんでいた。
その歌は彼女が胎児だった頃に聴いていた、
水平線から風を呼び寄せる歌だった。

団地の隅の小さな花壇の前では、
少年が険しい目つきで周囲を見回していた。
彼はこれから立ち小便をするところだったが、
誰かに見られはしないかと怯えていた。

やがて二人は互いの存在に気付き、
どちらからともなく見つめ合った。
少女には少年の顔がよく見えたが、
少年は逆光で少女の輪郭しか分からなかった。

ねえ、そこで何をしているの。
さ、さあな。何だっていいだろう。
ねえ教えて、お願い。とても気になるの。
ああ、もう。小便をするところだったんだよ。

なあ、どうやって屋上に登ったんだよ。
さあね。それは秘密。
はあ、じゃあそこで何をしているんだよ。
さあね。それも秘密。

少女は悪戯な笑みを浮かべ、
少年は頬を赤らめながら俯いた。
その瞬間、潮の香りを含んだ生温い風が吹き、
二人の髪と花壇の白い花を揺らした。
25/11/05 20:51更新 / わたなべ

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