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放課後の記憶
「俺は昔、日本列島を支配した男だぞ」
釣り竿を持った小汚い格好のおじさんが、
嗄れ声で叫びながらグラウンドに入ってきて、
あの日は部活動が三十分で終わってしまった。
おじさんは支離滅裂な演説をぶった後で、
駆け付けた顧問の先生に羽交い締めにされて、
職員室に連れて行かれた。

「お兄ちゃん、アメリカは今何時何分かね」
ぼんやりとした足取りで帰り道を歩いていたら、
長い横断歩道の途中で、
風呂敷を背負ったお婆さんに尋ねられた。
僕はまだ時差を習っていなかったから、
聞こえていない振りをして、
全速力で横断歩道を駆け抜けた。

「神様の落とし物」
子供達からそんなあだ名で呼ばれていた、
誰かの腐って粘ついた脳味噌が、
商店街を這いずり回っていた。
脳味噌は人目につくのを嫌がって、
普段は廃工場や学校の裏の森にいたのに、
どうしてあの日はあんな所にいたのだろうか。

「放課後の記憶」
僕が生まれて初めて書いたこの小説は、
まるで小説の体をなしていない、
意識と無意識が擦れ合って出た垢だ。
どこまでが現実で、どこからが空想なのか、
僕は自分の記憶を疑っているから、
上手く語ることができない。
25/08/06 20:44更新 / わたなべ

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