不思議な夢
母さんは病院で陣痛に悶えていた
父さんは摩天楼で棒倒しに励んでいた
僕は母さんの股から頭を半分だけ出して
ビールの泡を舐めながら父さんを応援していた
不思議な夢だった
不思議な夢だったから脳の皺に挟まった
登校中も授業中も
夢を摘み出すことばかり考えていた
放課後に街の裏口を探しに行こうよ
あの子が頬を赤らめながら誘ってきた
僕は期待と不安を悟られないように
あの子の足元の影に向けて頷いた
あの子は錆びて傾いた電柱をよじ登った
僕は用水路の濁った水面を覗き込んだ
どこも吐瀉物と花の香りが漂っていたけれど
街の裏口ではなかった
不思議な夢だった
不思議な夢だったから心臓の鼓動に紛れ込んだ
通勤中も勤務中も
夢に呼吸を合わせることばかり考えていた
母さんは介護施設で記憶の断捨離をしている
父さんは額縁の中で歯を見せて笑っている
僕は面会に行く度に母さんの頭をそっと撫でて
夜は発泡酒を煽りながら父さんに話しかけている
あの子は夫の転勤で街を出て行った
結局裏口は見つけられずに表口から出て行った
僕は表口の取っ手を握り締めながら
まだ裏口を探している
ああ また夢だ
これもまた不思議な夢だ
僕はあと何回不思議な夢を見たら
不思議だと思わなくなるのだろうか
父さんは摩天楼で棒倒しに励んでいた
僕は母さんの股から頭を半分だけ出して
ビールの泡を舐めながら父さんを応援していた
不思議な夢だった
不思議な夢だったから脳の皺に挟まった
登校中も授業中も
夢を摘み出すことばかり考えていた
放課後に街の裏口を探しに行こうよ
あの子が頬を赤らめながら誘ってきた
僕は期待と不安を悟られないように
あの子の足元の影に向けて頷いた
あの子は錆びて傾いた電柱をよじ登った
僕は用水路の濁った水面を覗き込んだ
どこも吐瀉物と花の香りが漂っていたけれど
街の裏口ではなかった
不思議な夢だった
不思議な夢だったから心臓の鼓動に紛れ込んだ
通勤中も勤務中も
夢に呼吸を合わせることばかり考えていた
母さんは介護施設で記憶の断捨離をしている
父さんは額縁の中で歯を見せて笑っている
僕は面会に行く度に母さんの頭をそっと撫でて
夜は発泡酒を煽りながら父さんに話しかけている
あの子は夫の転勤で街を出て行った
結局裏口は見つけられずに表口から出て行った
僕は表口の取っ手を握り締めながら
まだ裏口を探している
ああ また夢だ
これもまた不思議な夢だ
僕はあと何回不思議な夢を見たら
不思議だと思わなくなるのだろうか