ポエム
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僕は風船が嫌いだ
遊園地で貰った風船も
サーカスで貰った風船も
手放すと空高く飛んでいったから

僕は幼稚園で生まれて初めて
自分の息を吹き込んで風船を膨らませられた時に
飛び上がりそうな程胸が高鳴ったけれど

僕が膨らませた風船は手放すと
情けなく頭を振りながら床に落ちてしまって
何度繰り返しても結果は同じだった

僕は何かに裏切られたような
誰かに馬鹿にされて笑われたような気がして
泣きながら風船を叩き割った

はっとして周りを見渡すと
友達は皆愛おしそうに各々の風船を抱いていて
割ったのは僕一人だけだった

先生は僕が誤って割ったのだと思って
新しい風船をくれたけれど
もう膨らませる気にはなれなかった

僕はあの日から風船が嫌いになった
風船のことを考えるだけで気分が悪くなるけれど
何故今こんなことを思い出しているのかというと

僕の目の前で僕の子供が
誤って手放してしまった風船を見上げながら
泣き喚いているからだ

デパートで貰った時に叱って返させるべきだった
束の間でも子供が笑顔になればだなんて
稚拙な親心だった

甲高い響きの子供の泣き声が
頭の奥であの日の自分の泣き声と重なって
全身から冷や汗が噴き出してくる

おい風船 聞け馬鹿風船
今すぐに降りてきてこの子に謝れ
その後で僕がお前を叩き割ってやる

ああ 嫌いだ 嫌いだ
僕は風船が嫌いだ
大嫌いだ
25/02/19 12:12更新 / わたなべ



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