襟の黄ばんだワイシャツを着た
くたびれた顔のおじさんが
ため息と願望で膨らませた沢山の風船を
土手から夕焼け空に向けて飛ばした

会社を休みたい
旅行に行きたい
仕事のことを忘れたい
役割や責任から逃げたい

その様子を草陰から見ていた
可愛らしい顔の子供達が
笑いながらおじさんの側に駆け寄ってきて
パチンコやエアガンで風船を割った

パアン　パアン　パアン　パアン
やったあ　僕一気に四個割ったよ
パアン　パアン　パアン　
すごいなあ　でも俺だって三個割ったぞ

急に現れた子供達に驚いたおじさんは
まるで泣き出す寸前のように顔を歪めながら
夕焼け空にじんわりと溶け込んでいく
自分のため息と願望を見送った

パアン　パアン
後ろめたさを感じずに遊びたい
パアン　パアン　パアン
子供のように無邪気に笑いたい

パアン　パアン　パアン　パアン