夏の淵
無邪気な 残酷な手から逃れようと
自ら尻尾を切った蜥蜴は
陰気な廃屋に潜り込んだ
その庭先では 一本の向日葵が
陽射しに目をやられたように
震えながら俯いていた
休み前 浮かれた雰囲気に背を向けて
誰にも気付かれることなく
教室から出ていったあの子
彼を見たのは あれが最後だった
出鱈目に 乱暴に掘り返された
酷い有様の畑で一人
案山子は途方に暮れていた
その足元では 色とりどりの果物が
つまみ食いされた後のように
果肉から汁を垂らしていた
お盆前 うだるような暑さの中
派手に染め上げた髪を束ねて
路地裏を歩いていたあの子
彼女を見たのは あれが最後だった
風に紛れて辺りを行き交う
蝉の鳴き声 風鈴の音
空の片隅で膨れ上がった
歪な白い入道雲
陽炎のような物悲しさに
距離も 方角もぼやけて
瞼を火照らせた子供達は
みんな 夏の淵に消えていった
自ら尻尾を切った蜥蜴は
陰気な廃屋に潜り込んだ
その庭先では 一本の向日葵が
陽射しに目をやられたように
震えながら俯いていた
休み前 浮かれた雰囲気に背を向けて
誰にも気付かれることなく
教室から出ていったあの子
彼を見たのは あれが最後だった
出鱈目に 乱暴に掘り返された
酷い有様の畑で一人
案山子は途方に暮れていた
その足元では 色とりどりの果物が
つまみ食いされた後のように
果肉から汁を垂らしていた
お盆前 うだるような暑さの中
派手に染め上げた髪を束ねて
路地裏を歩いていたあの子
彼女を見たのは あれが最後だった
風に紛れて辺りを行き交う
蝉の鳴き声 風鈴の音
空の片隅で膨れ上がった
歪な白い入道雲
陽炎のような物悲しさに
距離も 方角もぼやけて
瞼を火照らせた子供達は
みんな 夏の淵に消えていった