ポエム
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砂時計の中
空の色が抜け落ちた瞬間
電柱の先 揺れる風船の上で
雲は反対に流れ出した
じゃれあっていた野花たちは
背筋を伸ばした一本杉に
キッと睨まれて口をつぐんだ

空の色が抜け落ちた瞬間
夢中で自転車を漕いでいた子供は
よろけて田んぼに突っ込んだ
顔を撫でていたそよ風の隅
不意に漂った母の匂いに
足がもつれて立てなくなった

暗い病室の枕元に
誰かが置いた砂時計
空の色が抜け落ちた瞬間
もしも 僕らはその中の
煌めく一粒なのだとしたら
時の残像なのだとしたら

夕陽のように沈む瞳と
重なり合った細い指
空の色が抜け落ちた瞬間
誰もがその幻を見た
何もかもが変わるようで
何時までも続いていく気がした
23/02/10 21:27更新 / わたなべ



談話室



■作者メッセージ
一本杉(いっぽんすぎ)
睨まれて(にらまれて)
漕いで(こいで)
撫でて(なでて)
隅(すみ)
煌めく(きらめく)
夕陽(ゆうひ)
何時までも(いつまでも)
です。

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