ポエム
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自殺志願
ハイブリットカーに
コンパクトカーに
計算され尽くした量の燃料と食料を積んで
砂漠の真ん中に向かって突っ走る

行き過ぎはよろしくない
かと言って十分に走らないのはなお悪い

私の街の警察と
砂漠向こうの街の警察が
私をどこまでも追ってくる

私は30年ローンで買った
無駄に機能の多い
そしてたいしてスピードの出ない
日本製のハイブリットコンパクトカーで
70年代のオーストラリアンフォードから逃げなければならないのだ

しかし、今回はうまくいきそうだ

GPSで示された場所まで
約5分

そこについたら私はうめきながら
荒野をさまよい
食料と水を求め
しかし燃料はなく
助けもない
死ねる
喜んで禿鷹の餌となろう

(これが車にGPSをつけた軟弱者の末路である。位置情報などGPSによってとっくに警察に伝えられて、またしてもやつは保護されるのだ。むしろ警察は奴のノロマな逃避行を人口衛星から見守っていて、退屈な任務の慰みにすらしているのである。奴の必死な様子にはどうしても笑いを堪えきれない。人工衛星は大変に進歩していて、奴がつぶやいたこのチンケな詩すら警察に送られ、笑い草になっているのだが、これには作者も顔をしかめるしかない。)


嗚呼、今日も自殺志願者が殺されようとしている。
21/09/22 10:10更新 / 三太郎



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