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太陽に抵抗するすだれ
私の前に私の長い影。私の後ろに太陽はなく、前を見て真っ向から太陽は照りつける。なのに、しかも太陽は二つあるわけでもないのに私の影は私の前にあるのだ。そしてそこを辿ると、私が見える。私の体である。私が私であるのになぜ私の体が見えるのか。私はそこにずっと立っていて、太陽が全く反対の場所に来たときのこと、私は私と対面した。しかし、いつまでも影は私の前にあり。私はいつまでも私の影を見ているのと同時に、まさに影の上に立ち、いや、私がまさに影であるのではないか?
 もし太陽の光があまりにも強くて影ができないほどであったとしたら、私はそのとき、ここにいないのかもしれない。私の体は透き通ってしまって、まるで放射能のように体を貫通してしまって、影ができなかったとしたら、綺麗なのであろうが、私に影がなければ私はどこにいれば良いのであろうか?
 太陽が私を消し去って、光の速さはそれでも遅く、時の流れを止めてしまった走馬灯に影が映って、かろうじて貫通する前の影が映って、私は太陽を恨む。
 しかし私は延々と影であり、影である限り太陽に反抗し、いつか影で空から太陽を消し去ってやるのだ。
 影は光がなければ、無いのであろうか?私には光による影という生成物と、光がないときの暗闇の見分けがつかないのである。
 私が居るとき影ができ、そして消えたとき影は消える。私がいなくならないと影は消えない。
 だが、私がいくら早く動いても影は在る。光より早く動けば私は影として、光を凌駕し、いつの間にか夜にしてしまえ!どうしても影はある。ついてくる。光があるところに影があればそれは存在する。だからみんな存在する。存在論の根本的解決である。みんな影を持っている。透明人間でさえお前のガラスのような透き通った体の輪郭がぼうっと揺れている。君は存在した。しかしいつか何もかも太陽の光が存在を焼き尽くして影を消してしまう。一面焼け野原になったとき私の目もあなたの目も潰れてしまう。だが、そうして目を閉じて影の世界が誕生する。
 しかし私は影であり、光を必要としない影であるから、焼き尽くせるものならしてみよ。私は影である。
 その夜影のないお化けを見る。満月は明るい。
 新月の夜。私はらんらんと輝く。
 私は私の体を犠牲にして影として居る。太陽が私の体に照りつける。でも私は影の方にいる。体なんて日除けにしかならないのだ。いつも私は影の方にいる。これがほんとの日陰モノ。(これを言いたかったんですねぇ。)
 涼しい。太陽がふたつみっつよっつ。地球は元来影であった。それをお節介にも照らしやがるので、目立ってしまってしようがない。今にもポロロッカ星人に攻め込まれそうではないか?あたり一面眩しいので影は少なくなって。
 土地が余っているって言うので、当国のエネルギー消費状況を考慮して体にソーラーパネルをつけることとする。この眩しさを逆に利用してやれば良い。その分影が広がる。私の居られる場所が広がる。いや、違う。ソーラーパネルによる影は私の影でない。そんなものは私でない。私は私の日陰モノでありたい。弱者の典型的な頑固さ。そうして私がソーラーパネルの影に居たとき私が欠けてしまった。どんどん私など無くなってゆく。しかしそんなことを言ったら全身型外骨格パワードスーツマシンガン付きなどを着たら、私が居なくなってしまうではないか。それは全身型〜以下略〜の影であって、私の影でない。私は私の日陰モノでありたい。そうして家にて全裸で過ごすことにしたのだ。私は私の影におる。私は私に隠れて涼んでいる。これは私の存在に関して大変重要な問題であるから、この章を安易に読み飛ばしてはならない。そう、私は私の影であることで私であるのだ!
 お前は私の日除けに何を一生懸命になって伝えたいのだ?と或る尋ね人に応えてやる。まずこの壁の影づたいにまっすぐ行けば、いつか太陽に当たって焼け死ぬであろう。旅人よ!ひきこもれ!
 言ってみれば私の体などはすだれであり、しかも性能は劣る。そうして私の体にどんどんと穴を穿つこととした。裂いて裂いて。風が通る。
 今、この暗い部屋に太陽はない。これこそ原初の地球である。影たる地球である。ポロロっか星人が見落としていった星である。あまりにも暗くて見えなかった。暗い海。夜の海。月の満ち欠けは海水浴など許さずただただ波の返す音。シーラカンスが浮いてくる。海の星地球。濃紺の影の星、地球。影の星で人間は目を開ける。進歩よ、目覚めよ。そして絶対に太陽を作ることなかれ。
 咳をしたすだれ。腸が飛び立つ。あおい芋虫。
21/09/13 13:26更新 / 三太郎



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