ポエム
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ガムの死
駅。階段。その梁。くっついたガム。
ふまれて、ねじれて、乾いて、たまに濡れて、また乾いて、踏まれる。
踏まれる。踏まれる。踏まれ続けている、靴底で何度も何度も。
どんどん黒くなる。どんどん固くなる。
もはやガムであったことすら分からぬ。もはやただの黒い斑点である。
それでもまだ踏まれる。人はガムを踏んだと思っていない。
でも、ガムは踏まれているのだ現に。でも、それはもうガムではない。
埋もれてゆく。硬い、包容力の欠片もない、無機質な冷たいコンクリートに。
踏め。次々と。もう、ここまで来たらもはや戻れぬ。
そうやって、知らぬうちにガムを踏み続けるといいのだ。
もう、ガムも反撃をやめている。粘ることもやめている。
その特徴的な弾力性すら失われ、かつ、さほど硬くもない。
ただ踏み、踏まれ、その存在はもはやもう誰にも分からぬ。
なんなのか、分からないのだ。お互いに。
知らぬまま踏み、知らぬまま踏まれる関係だけが遺骨のように残った。
ガムはそうやって死んでいく。
21/09/01 01:08更新 / 伊那秋菜



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