ポエム
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祖父の使い魔
あり。

そう、その、あり、である。

誠に不可思議なことであるのだけれど、

私の亡き祖父は、

ありを使い魔にして、

啓示する。

初めて使い魔として現れたのは、

祖父が亡くなり、遺体を安置していた小屋の、

蝋燭に登っていたのである。

また、帰りの車内にもいた。

一年に二度、又は三度

命日、誕生日(秋の彼岸と同一である)、そして、今日、春の彼岸である。

必ず、上記の三日のあたりに、中くらいのあり(前にも記したが、僕は無学だ)が、

一匹だけ、僕らのもとにやってくる。

それを見ると、

ああ、そんな時期か、と思うと共に、

寂しがっているのだろうかと、

勝手な邪推をしながら、

来たる日に、粛々と、墓地参りに向かうのである。

祖父は、なぜ忙しそうな、ありを使い魔に選んだのだろうか。

再会した時、一番にそれを訊ねたい。
20/03/20 22:27更新 / 伊那秋菜



談話室



■作者メッセージ
信じていただきたい。という、この言葉こそが胡散臭いものそのものであるのですが、
これ以外には表現のしようがありません。ただ、信じて、誠のものとして、受け取っていただきたいと存じます。

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