まどろみ
まどろみの昼さがり
窓を開け放ち
やわらかな風を迎えいれる
テーブルには八等分した白桃
その香りがとても甘い
まるで君の唇みたい
みずみずしくて
心まで蕩けさせる
キッチンから戻って来た君の
涼しげな笑顔の
唇をやっぱりジッとみてしまう
眉を顰めて
「なにかついてる?」
と聴くから
「なに、笑ってるの?」
と
質問に質問で返す
ふたりが歩いて来た道は
けっして平らかでも真っ白でもなかった
嵐に顔をそむけ
泣きたい道も歩いて来た
でも
夜は必ず明けたから
少なくとも今までは
明けて来たから
ふたりの目線の先にみえる白い光が
同じものだとはかぎらないけれど
ななめに歩いたって
逆さまに歩いたって
いいと想う
いずれ辿り着く
ほんとうにのゴールでは
ふたり笑っていよう
「早く起きてよね」
そうだ
起きないとあのみずみずしい
白桃を食べられない
けれど今のこのまどろみの幸せを
なんて君に伝えたらいいのかが
わからないから
起きられないまままどろみのなか