予言(君の寝言を)
夜が消えるとき
ひとつの死が終わり
そして新しい
ゆりかごの悲しみが
始まるだろう
時代はいつも
転がりつづけてゆくだろう
世界はいつも
なだらかな平和を希い
黎明の神性は
いつまでも光りつづけるだろう
幸せなんて
夢のようだと
まるで
安っぽい喪失みたいな微笑みを
浮かべる少年だった
生きるためには
残された廃油をすすって
息をするしかなかった
高熱にうなされつづける
暗い眼を切った
少年だった
背中の風が気になった
だれからも
好かれない新しい人生が真実なら
あの先生のやさしさは
ほんとうのやさしさなんだって
わかるよいまになってね
ずるい心しか
残っていない慈しみの女神の手は
われわれの終わりの瞬間の
項垂れたあたまを
やさしく撫でてくれようとする
すり寄ってくる
白っぽい影は
やがて世界中に広がり
壊れかけたエアコンの中にも
潜り込み
ジッと
人間を観察しつづけるのかもしれない
いいよ
予言を
してあげる
人は
いずれ
死ぬよ?
人類は
いずれ
滅びるよ?
人が消えるとき
喪う悲しみに侵食されるとき
そこにあるのは何十万年の
人類の悲しみなんだって
ほんとうの意味を知らされても
なんの
慰めにもならない
夜はいつも
あけるだろうが
朝はいつも
新しい希望そのものだろうが
道ばたに転がる
空きカンみたいな絶望が
いつもいつも気がつけば
裏切りの背中を突き刺す疾風に
カランカランと明るい音を響かせて
転がりつづけてくれているんだ
知らないふりをして
空をみあげて
みんなみたいに上手くは生きられない
人生の象徴みたいに
そのほろ苦い劇薬を
我慢して飲み込むんだ
だって生きたいから
それでも
けんめいに
生きたいから
いったいどこにあるのか
知らない成功を目指して
じゃ
ないよ
ただ好きな人のことだけ
好きなんだって
過去
人類の歴史で
人類が
死につづけたかずの果てにこそ
こんなに愛おしい君がいるから
ちゃんと
意味が
あったんだ
地球が
こんなふうに生きてきた
古代から人が
こんなふうに営んできた
意味は
あったんだ
君と逢うために
この素晴らしい宇宙は
誕生したんだとして
そこで君を悲しませちゃあ
存在している意味さえない
かもね
てか
ないし
君を悲しませた過去のじぶんよ
死ね
そして
生き返って
生き直させて
いーい?
予言をしてあげる
あたしはいつも幸せになる
いつまでだって幸せになる
気づけばいつも幸せだった
君のとなりにいられるだけで
まごうことなき真円になる
君とふたりでいるときに
ふたりっきりでいるときに
君とふたりで寝ているときに
歓喜のあとに寝ているときに
君の寝言を聴くだけで
甘い寝言を聴くだけで
まごうことなき幸せになる
生きるのが
死にたいくらいに下手だから
すべては
赦す
ただ君を抱く