猫女
あたし、
ほんとは
知ってんだ。
猫らの世界は
ただの人間さまからみれば
いつもピースの欠けたパズルだが、
いまの世界では
ダイヤモンドのカケラみたいな
あの三日月が突き刺ささってる夜空を
眺めあげられているだけで
幸せなのかもしれないにゃー?
あんまりは、
よくわかんねーけどな
それでいいのかにゃー?
しっとりと
流れつづける歌と
えらばれた悲しみの癒し方を
猫女のあなたは、
それでいいのかにゃー?
って、
不安げに
目をしぱしぱさせながら
あたしをみあげながら
尋ねるような鳴き声で聴くんだけど、
そんな答え、持ってないし、
悲しみ退治は成功でしたね、と、
猫のふりをやめた
あなたの寂しげな声を聴きながら
だって、人間だもの、って、
なんどもなんども
くりかえすあなたの
おちゃらけた笑顔を
そっとぬすみみながら、
その瞳に浮かぶ
淡い水みたいのを
ぬすみみた気がするから、
あたし、
この猫女、
ほんとうに大好きなんだよなぁ、って、
好きになるって、理屈じゃなくって、
そういうことなんだよなぁ、って、
わかりやすい恋心を
恥ずかしげもなく
堂々と披露したところで
死の香りがする流星疾駆の音が
小さく遠くなってゆき、
もはや消え去る直前に、
もう一度、死の直前の煌めきと
忘れられない春先の夜空の夢を
あたしのこころにいつまでも
いつまでも、
いつまでも、
灯しつづけてくれているのだろうという、
とても素直なやさしい夢にくるまれ、
明日へ向かって
ひねくれて斜にかまえないから、
ただ、
小雨のようなたおやかな嘘をついていい
ちょっとわがままな
自由だけは、
持っていてもいいだろうか?
尋ねたいのは、
あなたに。
猫女。
ねぇ?
あたしも猫に、なって、よい?