ポエム
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月食


防波堤で
待つ
月の終わりのときを。

欠けてゆく、
まるで
過去がうしなわれるみたいに
いまはもう冷たい風が
首すじあたりから
心の中に入りこむ、
見渡すかぎりの海は闇で
あの詩人がうたったような
波間に浮かぶ人魚なんて
ひとりも視えない、

でも、悲しみも、視えない。

月が漏らしている闇が空を覆い
そこには少しキラキラする
悲しみが視える気がする、

海は、ただ波を
この白い突堤には、
重い音を立てて、
うちつづけている
だけか。

弧をえがくように欠けてゆく月が
そしていつしか消えてゆくのを
待ちつづけるのは
愚かな人のすることだから、

私はいつまでもいつまでも
愚かな顔で、
夜の空を仰ぎつづけている、

いつまでも、いつまでも。









22/11/09 05:57更新 / 花澤悠



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