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星の筺

   


その夜、
過去からの自信なさげな夢が
乱れ、散らばって、
天の川のフリをしていた
その星の筺のなかに
そんななかで
正しい星ってなんだろうという
答えのでない
問いかけが入っていて

初めて星をみたときに聴いた
泣きたいくらい美しい
身をよじる孤独な声を
想い出させてくれたんだ

時は、
ただ風のように
ただ、
流れてゆく

そこには
やさしさも
きびしさも
はかなさも
たのしさも
ないんだよ

ただ
時とか風は
ただ
流れているだけなんだよ

だから
星の筺のなかをみたいって
想ったよ

なにかを
想って苦しかったわけでもないし
なにも
欲せず諦めてしまったわけでもない

すこし、だけ、
無表情な宇宙が
私にまなざしを
送ってくれたと
そういう気がしたけど、

これは、
勘違い、かな?

その夜、

新しいじぶんの夢の色を知ったんだ。

夜空を
乱れ
散らばりながら
羽ばたいている星たちの瞬きを

それが
たとえば夢であったのなら
たとえばもう一度
あの頃にみた
星の筺を
みせてほしいと想うんだ

たとえばそのあとのことはかまわない

それが
星の筺をみられる最後の夜になるとしても
それが
夜の街に架かる
夢の中の虹色だったとしても。

そんな星の筺を
みせておくれ、よ
星をみるために、
生きている、
夜に憧れる、蒼い、夜に。








22/10/24 21:27更新 / 花澤悠



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