三日月が流す雫の鱗粉みたいなキラキラを
傷ついたものを隠すのではなく
優しい夜の部屋にそっと置いてみた
悲しみは角を生やした鬼の顔で
両手両足を縛りつけようとする
三日月が流す雫の
鱗粉みたいなキラキラを
だれといっしょにみれば良いのか
だれか声をかけてよ孤りは痛いよ
幸せなんかむかし話のなかにしかない
遡れば小さな子どもだったころ
神さまのことさえ正しく信じていた
その姿をみたことなんかないくせに
幸せは変わらずにあの子ども部屋にある
その無垢な笑顔が浮かんでは消える部屋
すべての想い出が音を立てて崩れたら
その瓦礫の下を泣きながら泳ぐ
ただほんとうのことを云っていいのなら
私は子どものころから泳げなかったんだ