夜のうた
心からの憐れみを
僕の首すじに当ててください
その湿っぽいやさしさを
信じることが
歩くように生きることだと想うから
街は嫌なことなんか
なかったと云い張る
崩れおち、ひれ伏した小さな白い花が
かつて
凛、
と立っていた記憶とか
それは清貧の心より
より優れていた佇みだったのかもしれない
夜の涙が
ポロポロとこぼれ落ちる
明るい満月の瞳から
それは、きっと
水に溶けかけたむかしの想い出の
やさしい話を聴いてしまったからだろう
夜は寒い
夜は長い
夜は涙が出てしまう
空から逃げられない夢はいつまでも
無理をしてわらっている
君の足の裏で踏み躙られた儚い記憶を
もう棄てることにするよ
刻みはじめた時は
もういつまでも
いつまでも止まらないから
空を飛ぶ、数本の麦わらの輝きの儚さが
けっして叶わない希(のぞみ)を僕に
擦り込んだり、刻みつけたりするんだ
あゝ、それならそんな風の吹く夜に
何処へ
むかえばいいのだろう
何処へ
むかっては、いけないのだろう