ただ白い風が吹く
心は
折れなかった
君を失ったときも
心は
いつまでも痛んだが
べつに折れたりは
しなかった
そんなこと
人生に
よくあることではないか
そう
想えていたと想うけど
黄昏に
子どもの頃よく行った
商店街を歩いていたとき
秋の風がほおを撫でて
ふと
むかしのことを想い出した
一陣の白い風が
ビュー!
砂埃を瞳に感じ
イタッ
と声に出して驚いた
ボロボロと
ボロボロと
涙がほおを伝い落ちた
君を失った痛みではない
砂埃に泣かされているんだと
けんめいに
想おうとするのだけれど
わかっている
そのとき
きっと心を縦に支えていた棒が
呆気なく
初めて折られていたのだろう
黄昏の商店街で
ただ白い風が吹くなか
そのまま歩きつづけたのだ
私は立ち止まれずに
ただ夢の中を歩きつづけるように