ポエム
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ただの紫陽花ばかりでしたよ。


玄関まえの紫陽花は、
白く濡れてて、にっこり微笑むのでしたよ。

彼の庭には、小雨が降り、
美意識と毒とが、煌めいているのでしたよ。

紫とピンクのグラデーション。
百花の王の名前にゆれる花。

終わりかけてる無風の季節に焦りもせず、

無垢のまん丸い花がその名を呼ばれもせず、

咲いている苦しみの絶望の吐息を
全能の花の神のため息と勘違いしたのでしたよ。

一輪の紫陽花、目覚めた、とこしえの青空の下
青と黒のスーツがよく似合う
あの花が咲くような
詠み人知らずの歌があればいいので、
歌がウマイとかヘタだとか
そういう話では、ないのでしたよ。

ただ、
歌を歌う優しさのかけらのなかで、

玄関まえの紫陽花は、
白く濡れてて、にっこり微笑むのでしたよ。





19/07/02 06:46更新 / 花澤悠



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