オアシスの虹
地図にはない砂漠のオアシス
白く清潔な細かい砂が
霧のように舞っている
まったく
なんだって
こんなところまで
来たんだろうか
あの日の出来事が嘘のように想えるよ
忘れられないよ
生活している日常風景に
痛いほど大粒で
降りそそぐ悲しみが
心に消えない波紋を描くから
まるで釣り合わなくても
生きていくのに必要なしがらみや
生きている日々の日常とかいうものや
そういう
全てを棄てて
旅にでようと思ったんだ
若者よ
スマホを棄て
旅に出よう!
てなパクリのスローガンで
我が青白き胸を
すっかり燃え立たせて
もう
なにもかもいらないから
ひとりで
流浪の旅へ出ようと
むろんゆくさきは
道に迷って野垂れ死ぬ
広大な砂漠の世界
スローモーションでしか動けない
もはやようやく最期のときかと
生きることを真剣に諦めかけたとき
だれもいない砂漠の彼方に
黒い影がみえたんだけど
その影が
オアシスだったというわけ
僕って、強運?
神さまに生かされてる?
泣きながら水を飲んで浴びて泳ぐ
すると水の色のするさわやかな風の香りが
鼻腔をくすぐる
矮小で無能な私の人生をチャラにして
簡単にひっくり返してくれている
青空がえんえんと広がり
『我が人生に価値はあるんだ』と
ちょっと調子に乗ってるかもしれないけど
そう思い込んじゃうほどさ
だって
そのオアシスでみた心を洗い
心を癒す美しい
できたての七色の虹の橋の下で
思いどおりの夢をみながら
たっぷりと
心ゆくまで
眠れたんだから仕方がないんだよ