海底でみた風景
うち捨てられた
むかしの白黒写真のように
たいせつなものを
なくしまてしまう心象風景
そこに欺瞞の余地などあろうはずもなく
時の狭間に揺蕩う
とても嫋やかな心象風景
たにんとじぶんとの距離だけ
届かない無表情を浮かべて笑っている
イヂワルなキツネのお面をはめてるみたい
手探りで進む暗闇の大広間のよう
くびり殺された
夢をみていたころの私には
むろん
その率直さゆえに
なんにもみえていなかったという
自己憐憫
おぞましい
つまびらかにする自己肯定
救う価値もない私にも
絶望は
ある
だれにも私の声など届かない
流れておくれ
流れておくれ
やましい自死を願う疾病だけを
胸の奥に封じ込め
届いておくれ
届いておくれ
まるで真っ白な罪のない世界に
変わりたがっているのか
逡巡する騒がしげな希望たちは
嫋やかなキツネのお面をつけて
透きとおりながら
夜目にも鮮やかな絶望の黄色みたいに
心をひとつ狂わそうとする
たったあれっぽっちの
短いありきたりな言葉で
死ナセテ、オクレ
恐れて
そして死にたくなってしまう
溺れて
そこにはかつて嘲笑ったじぶんが
両足にしがみつき私を殺そうとする
無音の深海の海溝の底にある
うち捨てられて怯えている
過去の私の恥ずかしい抜け殻を
目を凝らして懸命に
一番大切な宝石みたいに
探しだそうとするのなら
その自傷行為はもはや
もはや
崩れ落ちた廃人の歌を歌う
うち捨てられたむかしむかしの私の風景に
限りなく近くそれは
もはや
永劫回帰とさえ呼べる
幾度となく繰り返される呪い
痛みも苦しみも
もはや
忘れてしまうそういう
無音の絶望の黄色い世界の繰り返し
なのか
繰り返し
なのか
だれか。