小さな、闘う人をみて
小さな、闘う人をみた
赤い影の
見た目には
まだ小学生くらいの可愛らしい女の子
空をにらみ
まるで遮二無二
ただ闘うために闘う
小さな、闘う人をみた
むろんそれはまぼろしだっただろう
だか私には
そこに荒野の荒波がみえ
そこで闘う
小さな赤い影がみえたんだ
運命、だとか
人生、だとか
言葉にしてしまうとちょっと違う
生物が誕生して
人類が誕生して
今のじぶんが生きている
みたいな
過去の歴史の知識も持たず
だが
なにひとつまちがわず
虚空を睨みつけ
世界という嘘と闘っている
小さな、人をみた
千年まえの人は
なぜなにも知らずに
それでもあんなに正しかったのだろう?
一万年まえの人は
文字も知らず
それでもきっと生きるための賢さに満ち満ちていた
それは、嘘なのだろうか?
いまの人がそれでも
世界生成の秘密に近いぶん
過去の人より
ずっと正しいのだろうか?
その
小さな、闘う人をみていると
悲しい風の音が
私にじわじわと滲み込んで来る
悲しい嘘が胸から溢れる
生きているはずなのに勇気も出せず
陳腐な毎日を繰り返し、繰り返し、
だからどんなに小さくても
だから彼女が赤い影のまぼろしでも
その闘う姿は美しく
その姿にみいってしまうのだと思う
この身を
騙し騙し着飾って
毎朝なんとか闘いに出かける私は
清々しい彼女をながめ
ながめることで
ほんのすこしの勇気をわけてもらい
私は私の戦場に
振り絞った勇気をたいせつに包み込み
向かっていくだけだ
たとえ彼女のように
世界に刃向かえなくても