黄金の十字架
あの頃
私ののどは渇き
ポケットのなかで握りしめた
黄金の十字架は
もうすでに死んでしまったように
静かにしていた
あなたはあの山をこえてこの街を出て
どの街で暮らしている?
そこはあたたかい?
いい人は、いる?
ちゃんと笑えてる?
そんな心配、してた
だから私ののどは渇き
十字架さえ無機物に変えてしまった
あの頃?
ええ。
あの頃から。
今、も。
私が言いたいのは
懐かしい想い出ばなしじゃなく
私が願うのは
あなたのどこかでの幸せ
でもなく
私は欲しい正直に言えば。
あなたに帰って来て、
欲しい。
ね?
今日も雨が降る
あなたがいないといつだってそう、
私の望みが叶ったことはない
いつかこの握りしめた手を広げて
黄金の十字架を手放せる日が
来るのだろうか?
それだけが私とあなたをつなぐ
最後のプレゼント
あゝ、雨が降る
いつだって雨の音は
だれかの悲しみを消してくれる?
あゝ、雨が降り
いつだって雨は
だれかの悲しみを洗い流してくれる?
あゝ、雨が降る
そしてようやく私ののどの渇きが癒される
すこしだけ
雨に感謝して
しまった
そうして
そんな風に
時は流れてゆき
私がひとりでいることが
あたりまえの時が流れてゆく
のかな?