封印
突き刺さった十字架を
スコップで掘り起こし
探すのは
かつて死んだ人魚
死にたいと、
いっていた
冷たい風がほおを斬るから
消え去ってしまいたい
こんな風に吹かれるだけの、桃の転がる街
嫌いなのは
狂ってしまった夜に
やさしく抱きしめながら
それでもあなたの
すべてを受け入れてしまった
じぶんじしんなのに。
差し出された失望を
空腹を耐えたつくりえがおで
誤魔化すんだろ?
そんなちっぽけな嘘だけが
未来の夢の形なのだと
さらに嘘を重ねるんだろ?
突き刺さった十字架を
スコップで掘り起こし
探すのは
かつてこの街で生きた人魚、
おまえは
前世も
孤独だったのか?
駆け抜けても
駆け抜けても
いつか戻って来てしまう
かつて人魚が住んだ街に
それは孤独の影としてかもしれない
ふざけた希望としての
桃の実が、
いたるところに
ころがっている
とても若く堅い意思みたいな感じで。
そして軽めの片翼を
ただ風を起こすためだけに
動かすときには
ちゃんと、声にして尋ねるんだ
荒んだ天使の罪、いかばかりか?
そこまでもてあぞぶのか、この寂れた街を
昨夜、桃の花が咲き始め
今夜、私の深いところで散る。
あなたの涙なんて
二度とみたくないから
彷徨った春の記憶は
封印するとするよ