深い夜の雨の悲しみみたいなやつ
ひとりで胸もとで
両手を握りしめている
いまよりも
幸せだったという夜を
思い出す
忘れれば
雨音も聴こえない
こんなまんまで
死ぬまで生きるのかなと
真っ暗な甕の底を
涙目で
覗きこむ
ケラケラ笑ってる
五歳のわたしがわたしをみあげる
なにかを間違えたのか
いまはまだ生きていってよい
免罪符は手にしていない気がする
気づけば
雨音も聴こえない
静寂が怖く
たったひとり
生きてきたんじゃないと
なんども
どこかに
置き忘れた宝石を探しても
その証拠は
雨水に流れ
ただ生きたいって
想いも流れ
じぶんはけれど明日もまた
平気な顔しているんだろう
愛想笑いみたいな笑い方だけ
馬鹿みたいにきれいに磨いて
夜はまだ長い
悲しみみたいなやつが更けてゆく