さらさらと雪の降るむかし
さくや、このはな
このはな、さくや
雪が降ります、音もなく
朝餉たべてた
あの家で
家族のこころは暖かかったね。
白く凍った空見上げ
ゆきゆき、ふれふれ
乞い願う
このいちめんの白世界
すこしは溶かしてくれないか
ゆきゆき、ふれふれ
乞い願う
本を読む。
手は
かじかんで
うまくページをめくれない
そこにほんとうが書いてあるのか
そんなことさえわからないのに
むかしから
インクの匂いが大好きなもんでね、
紙をめくって、本を読む。
ゆきゆき、ふれふれ
乞い願う
あのころ家族はたしかにあって
ケンカをしたり
ののしりあったり
部屋に籠城きめこんだりして
それでも家族は
あったかかったね。
ただのむかしの想い出ばなし、
さくな、このはな
このはな、さくな
つきひよ、とまれと
ねがっちゃ、ならない!