白蛇抄(かわいい蛇のクチビル)
今朝、手首を噛んでもらって。
蛇から。
私は言葉で伝えられないので、
こういう形で言葉にかえさせていただきます、って。
一年に数回ある、
森の集会でも
『アァ〜、スイマセン……』と
蚊の鳴くような声で謝ってた。
名指しで当てる猿も猿だと
あたしなんかは、憤ったけど
蛇はそんなでもないみたい。
で、その、純粋で、こころ優しい
シクラメンの花のような、白蛇が、だ。
あたしのために、そっと今朝
手首を齧ってくれたんだ。
そっと、甘噛みで、そっと、ね。
なんか、胸、きゅんって鳴っちまって、
あ、あたしのこと、好きなの?
そっから先は、よく知ってるわ。
きっと勘違いしたあたしが、
蛇に愛を告白して、
ゴメン、そういうの、ちょっとだけムリだから、
って、ね。
拒否ラレルんだよね?
って、思ってた。
けど、違って。
あたしの好きの量に比べたら
ほんのちょっとだけだけど、
なんか、蛇、あたしを
受け入れてくれてる。
あたし、こんな風に流されて
生きてても、いーのかなぁ。
って、
ふと思って。
蛇を守るためなら、あたし、
どんなどうぶつぶっ殺すのも
無表情で、できそうな気がして、
愛って、
怖いね?
で、素敵だね。
この、
守ってあげたい、って感情は。
この、
抱きしめたげたい、って感情は。
この、
好き好き大好き、って感情は。
ただの、
なんの理屈もなく湧いてきた、
理屈じゃない感情なんです、愛おしさ。
蛇?
ごめん。あたしは貴女に噛みつけないや。
お詫び(てか、ドサクサまぎれ)に、(だね?)
おでこにちゅってキスしてもよい?
なぜか、蛇はちょい恥じらって
目を閉じて、
(ホント、蛇が目を閉じないって
迷信だったんだ?)
クチビルすぼめるもんだから、
あたし、間違って(てなわけないけど)
クチビルに、
ちゅって、しちゃった。
ほんの、一瞬、だよ?
でも、
そのしあわせが終わったとき、
蛇、ひらけた目から
透明な涙みたいなの、
流してたから、
あたし、ゴメンなさいって
なんどもなんども謝ったんだ、
あたしの勝手な感情で
傷つけてしまった、もー死にてー。
すると、やっぱり、白蛇、怒ってて。
白蛇、怒って、こう言った。
ナンデアヤマルノデスカ、バカ。