生きている意味のこと
悲しみは蛇の目をして
私の喉元を食い破った
月明り射し込む二階の寝室で
地べたに私の身体がうごめいている
二個ある 蛇の目から流れる
涙の川で のたうち回る
世界は平和なのに 私はもがいている
真冬の冷気がにじむように身体を石にして
二度と楽しい一家団欒は望めない
欠けている優しさが弱い心を傷つけて
床掻きむしる爪は折れ
絶対的絶望が肉体を責め苛む
胸に穴が開くという 形而上の意味じゃなく
物理的に穴が開いてしまっている
その穴は喉元を食い破った蛇の
私の身体の前向きな臓器をしゃぶり尽くした蛇の
「明日を見られない当たり前さ」の呪いだ
抱え切れなくなる暗黒の憎悪が
まだ小さな塊でいる内に
私はやはりすべてを犠牲にしても立ち上がり
それが世界と隔絶された孤独な涙なら
私はその涙を堰き止めなければならない
たましいが傷つく日々が延々と続くとしても
その他には何も生きている意味が見当たらない
生きている意味のこと