秋の灯
いちめんの漆黒の空に
銀色絵の具を 振りかけて
秋 星座 またたく 地上には すすきゆらす風
生きて味わった苦しみが
嘘でもあるかのように消えていき
一日を そこそこ懸命には生きたはず
散歩道 軽やかにリズムをとって歩くと
懐かしい夕餉の匂いが
あちこちの家の灯りからもれてくる
いままで泣きたいことはあったけど
死なずにはいさせてくれた誰かさん
それを神というなら神さんに
この 星空えがいた透きとおったデッサン力ふくめ
甘ったるい憧憬で心で手をあわせて感謝する
少しならだまされてあげてもいいよ
いちめんのすすき野をわけいって河原に出る
いままでのそれでも均等だった年月
平凡とか異端とか賞賛とか罵声とか
喜悦とか懊悩とか号泣とか微笑とか
人の形として潜り抜けてきただけさと
一人で納得していたが
けっしてそうではなかったと今夜答えをもらったよ
いちめんの漆黒の空に
白色絵の具で 円 描く
月あかり かがやく 地上には すすきゆらす風
ほんとうに優しいのは月光
ねぇ あしたも降りそそぐ?