挽歌
そいつの
寂しいから寂しいと言って
なにが悪いんだ、ばかやろおと
ほざいた横顔が
頬を固めていて
柔らかな肉が突っ張っていて
なにかをこらえていた
夜に
そいつの
となりに座って
アフリカ大陸サバンナの夢をみた
なにもいない見わたすかぎりの大地を
黄色い風が吹き抜けていた
少しずつ夜は明けている
目覚めると
カーテンを閉め忘れた
からの瓶が転がったベランダがみえた
そこにも風は吹いていて
なぜか一匹の手のひらに乗るサイズのキリンが
遠く昇りかけの朝日を眺めて
喉を振り絞っている
そこには大陸など
みえやしないというのに
ふたり
寂しいから寂しいと言って
なにが悪いんだ、ばかやろおと
だれに向かって
訊けばいいのかわからない街に
ふたり
今からは横になり
あともう少し
眠ろうか