黄昏がすむ部屋
駅近の便利な物件、小さな
黄昏がキッチンに立っているそっ、と
かってにハンカチを取り出して
ついになみだまで浮かべるものだから
それが一番うそっぽいでしょ、って
しずかにキッチンを歩き廻るそっ、と
私は私のいい加減さを知っているし
あなたの弱点も知っているきっ、と
けっこう蛇口から漏れる音が聴こえるんだ
ポツリ、ポツリ、ポツリ、と
まるでむつごとが蒼く光る夜みたいに
耳元でささやくんだ、よねポッ、と
ほお染めてうつむいている
かぎりなく透明な空気の中
駅近の便利な物件には
小さな黄昏が住みついて
私を呪うかのような目つきを見せてそれでも
私の弱点を好きだという、んだポツリ、と