悲しいうたよ 流れないで
なぜ 悲しいうたが
流れるのだろう?
うたっているのは
どこの どなたなのだろう?
いつか その満月の夜には
この 高いビルの街を 歩く女の人は
月を みあげて 立ち止まるだろう
漆黒の 細いハイヒールを
舗道に つき刺す こころもちで
でも
あきらめて しまうだろう
だから そんなとき
ひとつの透きとおった、
メロディーが流れるのは
たえまなく降りそそぐ
月光の やさしさかもしれない
もう
折れてしまっても
いいんだよ
って
あんな 悲しいうたが
なぜ 流れたのだろう?
うたっていた人は
夜を 生きるしかない
わたしだったのだろうか?