朝の……
まず、空気の濃い場所を探した。
冷たい雨が降ったあとの
ロケット広場とか、泉の広場とか
みんな知ってる、待ち合わせの場所、
そこはまとわりつくほどの
期待まみれの空気が流れている、
ぼくたちのはじまりはあの夜で、
ふと気がつくと
空気は熱気を帯び、
渦巻いていたりした。
いまは猫と暮らしている
朝日が眩しい部屋。
朝のさわやかな風が
カーテンを鮮やかな
オーロラみたいに揺らして
この猫を
好きなので
すこし軽めのキスをする
ヒゲを触ると鋭くにらみ
ちょっと野生が目覚めたみたいに
牙も剥く、
春のバルコニーに出る。
昨夜、プランターに植えた
花が咲けば
この部屋から
見わたす街をいちめんのお花畑に
してみたら
それは夢の中、
そこで猫はすこしはしゃぎながら
野生の声をあげて
都会の朝を、
すこし、ほんのすこしだけ、
震わせる、
軽めの絶望がてら。